刑務所の新しいカタチ

すとう博文です。
新型コロナウイルスにおける緊急事態宣言下の千葉県において、オンラインでのヒアリングや会議を行うなど研究・研修を行っています。当初の計画では、刑務所に実習に行く予定でしたが、まさに「三密」の場となる危険性もあるため、残念ながら延期となっています。
そこで、今回は新型コロナウイルスの影響下における「刑務所」について考えてみたいと思います。
↓(写真1)昨年の矯正展(東日本成人矯正医療センター)

まずは世界の刑務所についてみてみます。

3月11日、イランの刑務所内では、コロナ感染が拡大し、7万人の受刑者を釈放しました。

3月18日、ブラジル・サンパウロの刑務所では、感染拡大防止を理由に囚人たちの外出許可を取り消したところ、刑務所内で暴動がおこり、1400人が脱獄しました。

3月22日、コロンビア・ボゴタの刑務所で、コロナへの対策が不十分なことをきっかけに暴動が起こり、受刑者23名が死亡し、刑務官含め90名が負傷しました。

3月29日、タイ・ブリラムの刑務所では、新型コロナウイルスが所内で広まっているという噂が広まり、窓を壊したり、食堂に火をつけるなどの暴動が起こり、一部の受刑者が脱獄しました。

さらに、アメリカ・ニューヨークの刑務所内においては、感染者増大のため、3月末時点で650名の受刑者を釈放しました。


それでは、日本の矯正施設はどうなっているか目を向けてみましょう。

↓(写真2)医療用ガウン製作(横浜刑務所)※法務省提供

日本の刑務所等における新型コロナ肺炎の発症は、北海道月形刑務所の刑務官、東京拘置所在監の被告人、大阪拘置所の刑務官の3例のみであり、いまだ刑務所や拘置所がクラスターとはなっていません。幸いなことに、刑務所内部でデマが流布したり、暴動や脱獄なども起こっていません。

しかし、刑務所内部で、受刑者がマスクをつけられるかどうかは、マスクの在庫や監視方針などに基づき、それぞれの刑務所により判断が分かれています。こういった状況にくわえ、高齢者が受刑者の5分の1を占める現状では、感染が一旦広まれば刑務所内で集団感染が起こってしまう可能性は大いにあります。

さらに、5月現在、特定警戒都道府県においては、弁護人以外との面会が出来ない運用になっています。むろん非常事態ゆえにこういった運用もやむを得ないかもしれませんが、受刑者にとって1番辛いのが、外部との繋がりを絶たれることです。これは、拘禁症状を発症したり、暴動、脱獄の引き金ともなりえるので、再犯防止や更生支援に向けて、オンライン面会や、出所後に向けた刑務所内でweb企業説明会などの制度を整備する必要があると考えます。

↓(写真3)マスク製作(加古川刑務所)※法務省提供

また、あまり知られてはいませんが、最近では民間企業の受注を受け、各地の刑務所における刑務作業として、布マスクや防護服を製作しており、医療用ガウンの製作準備も始めています。民間企業や自治体においても、積極的に刑務所等への受注を行うことが大切です。受刑者が様々な仕事の経験を積むこと、社会に対する貢献をしていると実感することが、本人の更生にも繋がると信じています。例年、刑務作業品を販売する矯正展では、質の良い商品が安価で購入出来ると行列が出来るほどの人気となっています。

withコロナ、afterコロナの時代を迎え、私たち国民が新しい生活様式を取り入れていかざるを得ない以上、これからの刑務所をはじめ様々な機関も、ソーシャルディスタンスを保ち「三密」を防ぐ工夫や、開放処遇や最新技術を用いた新しいカタチを模索していくべきだと考えています。今後、刑務所での実習などを通じて、矯正施設のあり方などを探っていき、安心、安全な国づくりに邁進して参ります。

↓(写真4)マスク製作(岩国刑務所)※法務省提供

すとう博文

千葉市議会議員(美浜区選出)。 すとう博文法律事務所(千葉県弁護士会)の代表弁護士。 渋谷幕張中高出身。松下政経塾第39期生。